BIツールや分析基盤への投資を行いながら、「思ったように使われていない」「レポートの数値が信用されない」という声は珍しくありません。その原因の一つとして見落とされやすいのが、データそのものの品質です。
データ活用の失敗、実は「ツール」より「データ」の問題
DX推進の文脈でBI・AI活用の議論が活発になる一方、「データが整っていない」という根本的な課題が後回しにされるケースが多く見られます。ツールを導入しても、入力されているデータが不正確・不完全・バラバラであれば、出てくる結果も信頼できません。
実際、Gartnerの調査では、データ品質の問題によって組織が被る損失は年間平均1,290万ドルに上るとされています。日本企業でも、Excelなどを使った手作業によるデータ修正が残っているケースがあります。
DX推進を阻む3つの壁
根本原因は「データの問題」——ツールより先にデータ整備が必要
- ツール・基盤の壁:BIツールや分析基盤を導入したが、元データの品質が低いため信頼できる分析が出てこない
- データの壁:部門間で定義が違う、欠損・重複・最新性の問題がある、マスタが整理されていないなど、データそのものの問題
- 組織・スキルの壁:データを活用する人材・体制・文化が整っていない。この壁が「最初の壁」と認識されがちだが、データの壁が根本にある場合が多い
データ品質とは何か——5つの観点
データ品質にはさまざまな評価軸があります。本記事では、実務で扱いやすい5つの観点に整理します。いずれかの観点に問題があると、利用目的によっては分析や意思決定に影響を及ぼします。
- 完全性:必要な項目に欠損なく入力されているか
- 正確性:実態と一致した値が記録されているか
- 一意性:同一データが二重登録されていないか
- 整合性:複数のシステム・部門間で定義と表記が統一されているか
- 最新性:データが適切なタイミングで最新の状態に保たれているか
なお、BFT Insightのデータ品質診断では、上記5次元に「有効性(Validity:値が定められた形式・ルール・範囲に適合しているか)」を加えた6次元でスコアリングしています。本文中で「6つの観点」と記載している箇所は、この診断サービスの次元数を指しています。
データ品質が低いと現場に何が起きるか
品質の低いデータは、現場に具体的な問題を引き起こします。
- BIレポートの数値が部門によって異なり、会議で紛糾する
- データ分析の前処理に時間がかかりすぎて、肝心の分析に手が回らない
- AIモデルに学習させると精度が出ず、原因がデータなのかモデルなのか判断できない
- 基幹システムのマイグレーション時に、データの不整合が大量に発覚する
データ品質低下が現場に引き起こす問題
品質問題
こうした問題は「現場の運用が悪い」として片付けられがちですが、実際にはシステムや組織の構造的な問題として発生しているケースも多くあります。
データ品質問題は、担当者個人の努力で維持できる範囲に限界があります。入力フォームの設計・業務プロセスのルール・データオーナーの設定といった仕組みの整備なしには、入力ルールや業務プロセスが変わらなければ同様の問題が再発する可能性があります。個人責任に帰着させず、組織・システム全体の設計として捉えることが改善の前提です。
「まず診断する」という考え方
医療と同様に、データ活用においても「治療の前に診断を行う」という発想が重要です。何がどの程度問題なのかを定量的に把握することで、どこから手をつければよいかが明確になります。
「まず診断」——4ステップのアプローチ
現状把握
6次元スコアで定量評価
課題特定
根本原因を分析
優先順位付け
影響度×難易度で整理
改善実行
ロードマップを設計・実施
BFT Insightのデータ品質診断では、保有データを6つの観点でスコアリングし、リスク箇所と改善ロードマップをレポートとして提供します。診断期間は約2週間。BI・AI導入の前段として、あるいはデータ整備の優先順位付けとして活用いただけます。
データ品質改善をDX推進に組み込む3つのアクション
- 診断から始める:完全性・正確性・一意性・整合性・最新性の5次元でデータの現状をスコア化し、BI・AI活用に向けた課題と優先順位を数値で把握する。「なんとなく汚い」を「どこが・どの程度問題か」に変換することが改善の出発点になる
- 影響度の高いデータから整備する:全データを一度に完璧にしようとせず、業務上の影響度が高いものから順に整備する。最も効果の高いデータに集中することで、BI・AI活用を早期に立ち上げられる
- 仕組みとして維持する:クレンジング後も、入力ルールの整備・定期モニタリング・データオーナーの設定がなければ品質はすぐに再劣化する。継続的な品質維持の仕組みをDXプロジェクト設計に含めることが重要
よくある質問
BIツールを導入したのに活用が進まない原因は何ですか?
BIツールが活用されない原因の一つとして、入力されるデータの品質が挙げられます。集計値がシステム間でずれている、レポートの数値が信頼されないといった状態ではツールがあっても意思決定に使われません。まずデータ品質の現状を把握することが先決です。
データ品質の改善はどこから始めればよいですか?
「どのデータが・どの程度の品質にあるか」を診断することが出発点です。完全性・正確性・一意性・整合性・最新性の5つの観点から現状をスコア化し、BI・AIへの影響度が高いデータから優先的に整備する進め方が効果的です。
データ品質の問題はIT部門だけで解決できますか?
IT部門だけでは解決が難しいケースがあります。データの意味や正しい値を判断するには業務部門の知識が必要になることが多く、クレンジングの方針決定には業務知識が不可欠です。IT部門と業務部門が連携してデータオーナーを定め、共同で取り組む体制が重要です。
サービス概要
2週間でデータ品質を可視化。定量スコア・リスク箇所・改善ロードマップをセットで提供します。まずは資料でサービス内容をご確認ください。
まとめ
- BI・AI活用が進まない要因の一つとして、元データの品質がある。ツールを変える前に、データの現状を把握することが重要
- データ品質は完全性・正確性・一意性・整合性・最新性の5つの観点で評価でき、いずれかの観点に問題があると、利用目的によっては分析精度に影響を及ぼす
- 現場への影響は「BIの数値不一致」「前処理工数の増大」「AI精度への影響」「システム移行時の不整合」として現れる。これらは別々の問題に見えるが、その背景にデータ品質の問題が関係していることが多い
- 品質問題は個人の努力で解決できる範囲に限界があり、入力設計・業務プロセス・組織体制の構造的な対策が必要。一度クレンジングしても仕組みがなければすぐに再劣化する
- データ活用を前に進めるための第一歩は、ツールの選定ではなく「データの現状把握(診断)」。「うまくいっていない」と感じている段階こそ、診断が最も有効に機能するタイミング